【フリーランス経営哲学講座】#60 最近の教育現場の事情

読者

最近、「今の大学生はアルファベットの順番がわからない」という話を耳にして衝撃を受けたのですが、普段教育のお仕事に関わっている栗林さんの目から見て、今の日本の教育現場で何が起きているのか教えていただけませんか?

栗林

「今の大学生はアルファベットの順番がわからない」というのは実話です。それでは今日はなぜそんなことが今の学校で起きているのか、順序を追って説明してみましょう。

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実は学力崩壊の状況は昔とあまり変わっていません

まず、知能指数というのをご存知ですか。IQっていわれるものなんですけど。

知能を数値化したものでIQ100を真ん中とするんですけど、IQ75以下で知的障害という判定になります。

IQ85以下を境界知能といって、知的障害ではないんですけど、学力とか生活に困難があったりするんですよ。で、このIQ85を下回る人がどれくらいいるかというと、全人口の16%~20%近くはいるんですね。

ということは、学校で1クラス30人としたら、その中の4,5人は境界知能になるんですね。この割合は公立学校ならどこでも同じで、お受験とかで上位層が私立に行くような地域だと、割合はもっと高くなります。で、この境界知能の人たちは、学校の勉強についていくのはかなり大変なんですよ。

栗林

昨今は学力崩壊ということが言われてるんですけど、これはこういう境界知能の方たちがわりと含まれるわけです。生まれ持ったものだからどうにもならない面もあるんですよ。ただ、これはずっと以前からこうだったわけで、最近になって急に境界知能の人が増えたわけではないんですよ。

読者

私が学生時代も、世の中は「学力崩壊」ってよくTVとか新聞で騒いでいた記憶があります。でも、別にそれは今でもあまり変わらないのですね。

今の教育現場の最大の問題点とは?

栗林

それじゃ、今の教育事情の何が問題かというと、小学校では自分が勉強をできない人間だということを気づかせないようにしているんですよ。

昔は相対評価といって、通知表で◎をもらえる人は何人、〇をもらえる人は何人、△をつける人は何人って決まってたんです。

だから、クラスの下5,6人は、必ず△がついたんですよ。でも今は絶対評価といって、本人が努力や成長を見せたら、学力が下の方でも〇をつけることができます。

評価の人数制限はなくなったんです。これによって、不真面目な子でなければ学力がよっぽど低くても△がつくことはなくなりました。

こういうことによって、小学生の多くが、自分は勉強ができるのかできないのか、よくわからないまま6年生にまでなっちゃうようになったんです。

読者

「モンスターペアレント」という言葉が流行りましたが、とにかく今は落ちこぼれが出ないように子供を育てることが令和の時代に普通になっているわけですね。

どんな分野でもできないとか落ちこぼれとかを見えなくする

他にも、運動会で順位をつけないとか、1位と2位だけ表彰してあとは横並びで誰が最下位かわからなかったり。

学芸会とか生活発表会でお芝居とかやるんですけど、セリフの分量を全員一緒にするんですよ。主役も一人じゃなくて、何人もの人が交代でやったりします。

あと学期末の終業式とかで、やたらと表彰が多いんですよ。どんな子でもとにかく褒めよう的な感じで。部活はもちろん、絵を書いたとかボランティアしたとかね。

表彰される人がとにかく多いので、名前がひたすら連呼されてます。途中から、何の表彰だったかわからなくなるという。

栗林

というわけで、とにかくみんなをほめたたえて、どんな分野でもできないとか落ちこぼれとかを見えなくしてしまってるんです。

今の子どもたちは自分がどんな人なのかわからない

こういう状態で小学校を過ごすことによって、今の子どもたちは自分がどんな人なのかわからなくなってしまったんです。自分がどんな人かを知るには、人と比べる以外に方法はありません。

自分は周りの子より勉強ができれば「頭がいい」とか、周囲と比べてスポーツができるなら「体育は得意かな」となるわけです。

もし無人島で自分一人だけだったら、自分は強いのか弱いのか、優しいのか怖いのかまったくわからないし、そもそもわかる必要もないです。

でもこの世は、たくさんの人の集まりでできています。

だから人は、自分を周囲と比べることで自分の立ち位置を知って、社会の中で自分がもっとも有利になるにはどうしたらいいかを考えて身の振る舞い方を決めていくんです。

読者

他の子と比べて劣等感を抱くことは確かに辛いですが、その現実を直視させないようにしてきた結果が、今の状況を招いているわけですね。

いつか人は自分の勘違いに気がつく

栗林

ポートフォリオの作り方の話に戻るんですけど、ポートフォリオで伝えるべきことって究極は「何をやるか?」「いくらでやるか?」の2つだけですよ。

それなのに、人との比べ方を小学校で学ばせないものだから、勘違い中学生が続出したんですよ。でも、いつかは勘違いに気がつきますよね。

で、結構大きくなってから勘違いに気が付くと、すごく恥ずかしいじゃないですか。その恥ずかしさに耐えられないというか、受け入れられないから、逃げ出すしか方法がないんですね。

その逃げ出すということが「不登校」という形になって現れます。

この不登校が、今メチャクチャ多いんですよ。各クラスに、2,3人は必ずいます。中学校で勉強がパッパらぱーの人の数は、昔も今もそんなに変わらないですよ。知能指数の分布に大きな変化はないですから。

ただ、自分ができないということが受け入れられなくて学校に来られなくなった、という子はめちゃくちゃ増えましたね。

読者

どうしてこんなに不登校とかグレーゾーンとか、発達障害みたいな言葉をSNSなどで目にする機会が増えたのか、よくわかるような気がしてきました・・・。

大学の偏差値が本当にアテにならない時代

今は中学校でもフリースクールとか、高校でもサポート校とかいうのがすごく増えました。

高校でサポート高というのは、数学の授業で小学校の算数とか英語とかやってます。ABCを全部覚えるところからやってます。それでも高校卒業と認定されるようになりました。

栗林

で、そういう子たちが、推進入試で大学に進学するようになったんです。そりゃ、大学教育も崩壊してますよね偏差値50の私立大学で、ABCが全部言えない学生って普通にいますよ。Be動詞の使い方がわからないって、ざらにいます

2割引きが計算できない大学生も、そこら中にいますよ。びっくりでしょ。

偏差値って、ホントにあてにならない時代になったんですよ。例えば定員150名の学部があったとすると、100名ぐらいは推薦入試で確保します。この推薦入試で落ちる人は誰もいないです。

名前書けば全員合格です。で、残りの50名が一般入試なんですけど、ここが国公立や上位有名私立の滑り止めとして600人が受験して200人が合格みたいな感じです。

こうなると合格倍率が3倍で偏差値もそこそこになるんですけど、実際に入学するのは30人くらいで、足りない20人を補欠合格連発して定員いっぱいにするわけです。

すると、偏差値は最初に合格判定した200人のデータになるんですけど、実際の入学者は推薦入試と補欠合格ばかりですから、実態とは大きくかけ離れています。だから、大学の偏差値って本当にアテにならない時代になりました。

読者

私は昭和世代ですが、もう自分の息子や娘たちがこれから進んでいく教育の世界は全然別物になっていますね・・・。

栗林

で、推薦入試の子たちなんですけど、自分たちが実は勉強ができない、という自覚がいまだにないんですよ。小学校の延長のままです。そうやって、今日まで生きて来れちゃったからです

だから、大学でレポートとかをちょっとダメ出しされると、すぐに来られなくなります。自分のダメな部分を受け入れて努力する、ということをやってきてないんですね

今は大学も出席確認が厳しいですから、大学に来ないと単位が出せない仕組みになっています。というわけで、今の大学は中退者が多いんですよ。

本日は以上です。

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