【フリーランス経営哲学講座】#25会社や家族など周囲の人間に反対されたらどうするか?

読者

スキルが身についてきたので、フリーランスになろうと思います。でも親や友だちに相談すると、いつも反対されるんですよね。会社を一度やめたら後戻りできないので、フリーランスになるか迷っています。

栗林

転職したりフリーランスになろうとしたりしたときに挫折する多くの原因はスキルが身につかないというよりも、人間関係を書き換えれないケースが多いです。そこでフリーランスを目指す上で人間関係についてどう考えればいいのか、改めて考えていきましょう。

人間の本能「安定が大好き、不安定が大嫌い」

人間の本能というか、DNAに刻み込まれたような人間の根本特性としてあるのものとしてね、「安定が大好き」っていうのがあるんですよ。人間は誰しも、どんな状況であろうとも、安定が死ぬほど大好きなんですよ。

でね、安定が大好きということは、その反対の不安定が大嫌いなんです。だからね、不安定な状況だったら、なんとか安定な状況にしようと努力するんです。そして今が安定してたら、その状況を不安定にしないように努力しようとします。

読者

仕事が不安定だと、不安や心配で精神衛生上、良くないですからね。

栗林

これね、努力という行動で表現してくれるとわかりやすいんだけど、多くの人は頭の中だけで、不安定な状況を無理やり安定だと思いこもうとしたり、周囲で不安がっている人に「大丈夫でしょ」って声をかけて、安定に巻き込もうとしたりします。人間は、周囲の人が自分と一緒だと安心するからね。

読者

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」と似ていますね。

命さえも奪ってしまう正常化バイアスとは

こういう状態のことをね、心理学では「正常化バイアス」と言います。

不安定な状況を無理やり安定だと頭で思いこんでね、周りの人を安定に巻き込もうとします。

栗林

この正常化バイアスがもっとも多くみられるのが、大規模災害の時なんです。東北大震災のときね、地震では助かったけど津波に逃げ遅れて亡くなった人が大勢いるんですよ。あれね、津波はきっとここまで来ない、大丈夫と判断したのは油断とか想定外とかじゃなくて、正常化バイアスなんですよ。

津波の前の地震で、ものすごく激しい揺れを体験して、揺れが収まったあとも心臓のドキドキが続いてるんです。こういうものすごい不安定な状況の直後はね、人間は「安定したい!」って強く思います。でね、安定とは現状を変えないことですから、その場にとどまることが一番の安定なんですよ。

読者

私も何が正解か分からない時は動かないですね。いや動けないのかもしれません。

不安だらけで動けなくなる

地震の直後にね、津波の危険性はいろんな形で知らされました。で、「安定したい!」って強く思ってる状況で、家を出て遠くへ避難することは、安定を壊して不安を強めることになります。

どこまで逃げるの?どうやって逃げるの?避難先で食事は寝床はトイレは?不自由で大変な思いをしないかな?とかね、いくら考えてもわからなくて不安だらけなんです。

栗林

というね、この強い不安な気持ちを打ち消すために頭の中で考えたのが「津波はきっとここまで来ない、だから避難しなくてよい」というものなんです。

読者

「考えることを放棄した」とも、いえるかもしれません。

でね、そうやって避難しない人たちがいると、その避難しない人たちを見てね、避難しようか迷ってる人も避難しなくなっちゃう。こうして被害が拡大したんです。

もしね、地震の激しい揺れがなくて津波だけだったら、もっとたくさんの人が避難できたかな、と思います。地震の激しい揺れでものすごい不安にさせられちゃったから、振り子の原理と同じで、安定したいって強く思っちゃうんですよ。それが正常化バイアスをすごく強めちゃってね、余計に動けなくなって避難しなくなっちゃったんですね。

人間は周りの人も現状維持させようとする

栗林

でね、地震の話で前置きしたんだけど、これは人間関係でもまったく同じなんですよ。人間はね、安定とか現状維持が大好きですから、目の前で誰かが不安定なことをしようとすると、その人を安定させるような声掛けやアドバイスをします。これもね、人間関係における現状維持の法則なんて言ったりします。

読者

安定させるような声掛けやアドバイス…。具体的にどういうことですか?

わかりやすく言うとね、サラリーマンをやっている友人に対してね、俺フリーランスになろうか迷ってる、って言ったら、かなり高い確率で反対するようなアドバイスを受けます。

これはね、友人は本気でその人のためにアドバイスしてるんだけど、

根っこはね、目の前で不安定な状況が発生するのが嫌なんです。

栗林

友人はね、自分だったらサラリーマンが安定でフリーランスは不安定だって思っててね、目の前のその人のことをね、自分と同じレベルだと思ってるの。だから、自分と目の前の人が重なってしまってね、自分が不安定になるような感じがするから、安定のサラリーマンでいようよ、ってアドバイスするんです。

読者

相手のことを思ってではなく、自分が不安定にならないようにアドバイスしているんですね。

現状維持の法則が働く条件「相手が自分と同じレべル」

人ってね、周りが自分と同じだとすごく安心するから、周りの人を自分と一緒でいさせようとするんです。で、ポイントはね「周りが自分と同じだと」の部分なんですよ。

こういうね、現状維持の法則みたいなのが働くのには条件があってね、相手が自分のことを同レベルだ、って思ってることなんです。同じレベルだからこそ安心を感じるので、それを壊されたくないって思うから、現状を維持しようとするんですよ。

栗林

例えばね、ソフトバンクの孫正義があなたの隣にいてね、今度こういうビジネスをしようと思うんだけど、って聞いてきたら「やめたほうがいいよ」ってアドバイスしますか?しないでしょ。どうぞ頑張ってくださいって思うじゃん。これね、レベルが違いすぎるから現状維持の法則が働かないんですよ。

周囲から反対されない方法「圧倒的な知識と技術を身につける」

ということはね、もしあなたがね、フリーランスをやろうとして周囲から反対されて迷っちゃったとしたら、周囲と同じレベルだと思われてるからなんですよ。圧倒的な知識と技術を見せつけてね、こいつすげーなと思われたら、レベルが違っちゃうので現状維持の法則適用外とみなされて、誰も反対しませんよ。

だからね、反対されるのが嫌だとか、反対されて迷っちゃうんだったら、圧倒的な知識と技術を身につければいいだけですよ。

読者

知識と技術を身につければいいだけですね!周りを圧倒してやります!!

大多数のフリーランス「反対されるほどの人間関係がない」

栗林

サラリーマンやりながらだって、フリーランスに必要な知識と技術ぐらい身につきますよ。ただね、今フリーランスをやっている人がみんな反対を押し切った強い人、ではないですよ。むしろ、そういう人は少ないです。

フリーランスやっている人の多くはね、サラリーマンの時からすでに人間関係が希薄だったから、反対されることが少なかったって感じですね。だいたいね、サラリーマンとしてうまくいってたら、フリーランスになりたいってなかなか思わないもん。

読者

サラリーマンが大好きだったら、フリーランスになる選択肢が出てこないですね。

うまくいってなくて人間関係も希薄だから、サラリーマンを捨てることも抵抗が少ないんですよ。だからね、フリーランスになることを迷う人って、そこそこ人間関係に恵まれてるからなんですよ。恵まれてるからこそ、現状維持の法則が働きやすいんですよ。

フリーランスになるのを迷う理由「ダメ出しされるのがすごく嫌」

でね、こういう前提を踏まえたうえでね、あなたがフリーランスになるのを迷ってるとするじゃないですか。これは何を迷ってるかというと、もしフリーランスをやってみてうまくいかなかったときにね、

これまでの人間関係の人達から「ホラ、だからやめとけって言ったのに」って言われたり、そうやって思われることがすごく嫌だから、フリーランスになるのを迷うんですよ。

現状維持でいようよって言ってくれた人達に、あとでダメ出しされるのがすごく嫌でミジメなんです。だから、いつまでたっても不安だし迷うんです。

栗林

これってね、あなたの人生の望みが反映されてるんですよ。つまりね、その人の人生の望みは何かというと、これまで自分の目の前にいた人達に褒められたいってことなんです。それが人生の一番の望みだから、目の前にいた人達にダメ出しされることを怖がるんです。

読者

フリーランスになることではなく、目の前の人達に褒められることが望みだったんですね。

自分の一番の望みは何なのか

目の前にいる人たち、例えば親とか家族とか友人だよね、こういう人たちと一緒に現状維持でいると、安心はしてくれるけど、褒めてはくれないんです。それよりもむしろ、年齢の関係からちょっとマウントとられたりとかね。

そういうのが嫌だから、飛び越えてフリーランスって考えるんだけど、当然反対されるし、失敗したときのダメ出しはそりゃすごいよね。だから不安にもなるよね。

人間関係で反対されてフリーランスになるのを迷うんだったら、自分の一番の望みは何なのか、ホントによく考えてね。

読者

親に褒められることが望みだったら、反対されたらフリーランスになんてなれないですよね。

栗林

自由な人生ですか、それとも、目の前にいる人たちに褒められたいからですか。目の前にいる人たちに褒められたいなら、フリーランス以外の方法を考えたほうがいいよ。

なぜかっていうとね、これまで目の前にいてくれた人たちは、あなたがフリーランスで大成功したとしても、絶対に褒めてくれないからです。あなたの人生の望みが手に入らないから、寂しくなってあとで後悔するよ。

フリーランスで大成功すると、あなたの存在はなくなります

あなたがフリーランスで大成功したとするじゃないですか。そうするとね、現状維持の法則であなたを引き戻そうとしてた人たちは、あなたのことを存在しない人として生きていきます。だってフリーランスで成功した人と深く関わったら、自分がすごく不安になるもん。あなたの隣に孫正義が毎日いたらさ、落ち着かないでしょ。

栗林

だからね、フリーランスになって大成功したらね、これまでの古い人間関係は自然と消えていきます。でね、消えていったことを寂しく思う人は、人生の望みが自由じゃなくてね、目の前にいる人たちに褒められたかったんだよね。

でもね、フリーランスで大成功しちゃうとね、これまでの人たちは二度と褒めてくれません。

読者

古い人間関係が消えるのは寂しいですが、進む方向性が違うなら、しょうがないですね。

フリーランスになるのに周囲に反対されたらどうするかってことなんだけど、反対される時点でね、あなたの望みはその人たちに褒められたいって可能性があるんだよって。人間関係はすべて同レベルでね、自分の心を反映しているのが周囲の人達だからね。

栗林

フリーランスとして失敗して、あとから「ほらみろ」って言われてもいっさい何も気にならないよって人は、そもそもあまり反対されないはずだからね。よく考えてくださいね。

本日は以上です。

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