【フリーランス経営哲学講座】#45インボイス制度でフリーランスが備えること

読者

「インボイス制度が始まる」と聞きましたが、仕組みが全く分かりません。フリーランスが備えることがあれば、教えていただけますか?

栗林

インボイスについてなんですけど、これまで確定申告をしたことのない人にとっては、インボイスどころか消費税の仕組みを誤解しています、きっと。私もそうでしたから。消費税も含めてインボイスについてお話します。

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お客さんからいただいた消費税は国に全て納めていません

起業して税務申告をするようになって、初めて消費税を納税する仕組みを理解しました。それまで、本当に勘違いだらけでしたからね。

消費税で一番大事なのは、お客さんからいただいた消費税額を、そのまんま国に納めているわけではないんですよ。まずね、ここが一番衝撃でした。

110円のものを買ったら、消費税10円分がそのまま国に納められていると思ったら、まったく違いました。実は、仕入れにかかった消費税分を差し引いた金額を、国に納めていたんですよ。

読者

ちょっと複雑ですね。もう少し具体的に教えていただけますか?

栗林

さっきの110円の商品で10円が消費税分だとすると、仕入れ価格が55円で5円が消費税だったとします。すると消費税10円分から仕入れのときの消費税5円を引いた金額を、国に納めればいいんです。だから、110円売ってお客さんから10円分の消費税をもらっても、実際に国に納める消費税は5円だったんですよ。

これを、仕入れ控除といいます。消費税の納税は、この仕組みが大前提にある、ってことを覚えてください。

消費税を納めなくてもいい2種類の人

次に、自営業とかフリーランスをやっている人で、お客さんから消費税をもらうんだけど、国に1円も消費税を納めなくてもいい、という人がいます。これは、1年間の売上が1000万円以下の人と、あと開業1年目の人です。この人たちは、お客さんから消費税をもらったら、その分はマルマル自分の売上にして良いんです。

これは、消費税導入のときに、零細企業や個人自営業の人がめちゃくちゃ反対したんですよ。そこで、そういう反対意見を抑えるために、年間売り上げが3000万円以下の人は消費税を払わなくていいことにして、反対運動を抑え込んだんですよ。で、それが今は1000万円まで縮小されました。

このままなら何の問題もないんですが、実はインボイス制度が大問題になってくるわけです。

読者

大問題なら知っておかないと大変ですね!

取引できなくなるインボイス制度

さっきの仕入れの時に支払った消費税分を引き算できる仕入れ控除なんですけど、この仕入れ控除を適用するには、消費税をきちんと払っている事業者からの仕入れのみ適用できます、という風に制度が変わるんです。

2023年10月からですね。ということは、年間売上げが1000万円以下で消費税を払っていないような業者からの仕入れについては、仕入れ控除を認めません、ということになるんです。

栗林

仕入れ控除ができないと、消費税を多く払わなくてはいけないので、すごく損します。だから、消費税を払っていないような業者と取引するのが、すごく嫌になって取引をしてくれなくなるんです。

読者

消費税を払ってないから取引できないのは残念ですね。

売上1000万以下の事業者が生き残る2つの道

それじゃ年間売り上げが1000万円以下の事業者はどうすればいいかというと、自分の事業について消費税の計算をして消費税を納める消費税適用事業者になるか、それとも引き続き消費税を納めない免税事業者のままでいるか、どちらかを選ぶことになります。

消費税の適用事業者になると、まず消費税を計算しなければいけないので、とても面倒です。あと、計算した結果の消費税を国に納めることになりますので、出費が増えて嫌ですよね。

栗林

さらにですね、消費税の適用事業者になると、適用事業者ですよっていう登録番号が国からもらえて、この登録番号を請求書に記載しなければなりません。これも面倒ですね。請求書にこの登録番号が記載されていないと、相手は消費税の仕入れ控除ができないんですよ。

さらに、フリーランスや自営業者だと、自宅兼事務所の人は多いですよね。

で、家賃とか光熱費とか携帯代とかも経費で落としていると思うんですけど、こういうのも消費税分を仕入れ控除しようとしたら、登録番号のついた請求書を個別に発行してもらわないといけないです。

読者

仕事の仕入れだけでなく、生活全体で登録番号の請求書が必要なんですね。

でも、カード引き落としとかだとそういう請求書はないですから、個別に手続きを取る必要があります。こう考えるととても面倒なので、引き続き消費税を支払わないでいる免税事業者でいたほうがいいと思いますよね?

でも、お金を払ってくれた相手が消費税の仕入れ控除をするような事業者だと、仕入れ控除ができなくなっちゃうので、もうそういうところと取引をするのはやめようかな、となって取引きを打ち切られる可能性があります。

消費税を払わないと、ココナラでどうなるのか

ココナラとかランサーズとかで仕事をしている人は、消費税の適用事業者かそうでないかで、手数料が変わると思います。消費税を払っていない免税事業者だと、手数料が高くなると思います。

あと、ココナラとかではなく普通に仕事を取っている人だと、ウェブデザインの場合、相手はほとんど事業者ですから、消費税を払っていない免税事業者だと、取引を打ち切られるか、消費税を仕入れ控除できない分、値下げしてくださいってことになるかと思います。

読者

消費税を払っても払わなくても、収入が下がりそうです。

栗林

そういうのを個別に説明して対応するのって、大変ですよね。で、消費税の適用事業者になって消費税の計算をするのはとても面倒です。経費に関する請求書もいちいち集めなくちゃいけないし。

で、そういう面倒を省く方法として、簡易課税制度というのがあります。ざっくりと言うと、経費の計算がとても面倒なので、売上の5%を消費税として払ってくれればいいですよ、というものです。これだと、1年間の売上合計の5%だけを払えば、後はなにもやらなくていいという優れものです。

フリーランスの多くは簡易課税になるでしょう

栗林

ウェブデザイン制作とかだと、仕入れるものってあまりないから、消費税をちゃんと計算して払うより、簡易課税の5%のほうが安く済むことが多いです。この簡易課税にしておけば、消費税適用事業者の番号を求められたときだけ提示すればよく、あとは何もしなくてよいのでラクです。

読者

フリーランスは一人でやっているので、計算の手間がかからないのはいいですね。

また、取引相手が簡易課税だと、相手も消費税を経費で計算する必要がないので、番号の提示は求められません。で、みんなが簡易課税になると、簡易課税同士の取り引きには登録番号のやりとりは不要なので、ラクチンですよね。というわけで結局、

1000万円以下のフリーランスや自営業者の多くは、簡易課税で消費税を払うことになるんだろうな、と思います。

簡易課税の届け出は来年の3月末までです

その届け出を来年の3月末までにしなきゃいけないというのは、今回のインボイス制度、というやつです。ちなみに簡易課税は、年間売り上げが5000万円以下の事業者に限りますけどね。今回、参議院選挙で自民党が圧勝しましたよね。

栗林

今の岸田総理大臣で、宏池会という派閥の流れをくむんですけど、この宏池会というのは、とても財務省よりで財政規律に厳しい派閥なんですよ。だから、今後バラマキは減ってくるでしょうし、インボイス制度が反対運動で撤回されることはもうないですね。

安倍元総理は財政出動派でして、岸田政権に影響を与えていて財政規律をさせなかったんですけど、安倍元総理が亡くなってしまったので、今後は財政規律に傾くのでは、と予想されています。もともとインボイスは、消費税をとりっぱぐれていた個人事業やフリーランスから消費税を取ってやることが目的でして、財政規律重視の観点からも、間違いなく実行されるでしょうね。

読者

最近フリーランスが増えて目立ってきたのも関係していそうです。

零細企業から消費税をとっても、税収としてはたかが知れていて、徴収コストやデメリットのほうが大きいんですけど、そういう話が通用しないのが財政規律の方々なんですよ。財政の悪化は税収不足ではなく、社会保障費の増大が原因なのは、高校生でも知ってるレベルの話なのにね。今日は以上です。

今回は以上です。

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